食事はただの「栄養補給」だけでなく、心のケアにも繋がる重要な活動である
看護師 田中 結心
今回、神緑会館記念ホールで行われた 日本栄養アセスメント研究会 にて「脱フレイルを目指した栄養治療の過程で体組成はどのように変化しているか-パイロットスタディーから-」という演題で発表する機会を得ました。発表を通じて、多職種連携がいかに患者様の回復に大きな影響を与えるかを実感し、栄養治療を進める中で患者様の身体的回復のみならず、精神的なサポートの重要性について深く考えさせられました。
発表では、栄養治療が患者様のADLに与える影響について触れました。フレイルの予防と回復には、骨格筋量の維持と適切な栄養供給が必要不可欠であり、その過程で患者様がどのように回復していくのかを観察してきました。栄養治療は単に必要な栄養を補充するだけではなく、患者様の回復に向けた意欲を引き出す重要な要素であると実感しています。特に、食事が身体を作るだけでなく、生活における楽しみを提供することで患者様の前向きな気持ちを引き出し、回復意欲を高める力があることに気づきました。このような視点を持つことで、治療の効果がより高まるのだと感じています。食事はただの「栄養補給」ではなく、心のケアにも繋がる重要な活動であり、日々の食事が患者様にとってどれほど大きな意味を持つかを再認識しました。
さらに、時間栄養学という新たなアプローチについても学ぶことができました。従来の栄養指導では 「何をどれだけ食べるか」 という点に焦点が当たっていましたが、近年は
「いつ食べるか」 という時間帯に着目した食事管理も注目されています。学会で紹介された症例では、食事内容やタイミングを調整することで、血糖値や脂質異常症など、生活習慣病に関連する指標が改善される結果が得られました。このデータは、栄養指導の新たな方向性を示唆するものであり、栄養治療の効果を最大化するためには、食事の質と量だけでなく、食事のタイミングや生活リズムが密接に関係していることを学びました。
また、回避・制限性食物接触症の症例についても深く考えさせられました。この症例では、食事をすることで身体的被害が生じるのではないかと不安に感じており、栄養摂取が進まない状況にありました。患者様がどのように不安を克服し、回復に向かうのかを追跡する過程は非常に感動的であり、栄養治療を通じて患者様が心理的にどれほど変化するかという点に焦点を当てることの重要性を再認識しました。
訪室を重ねることで表出が増え、体組成分析の結果を患者様に示しながら食事形態を変更することで少しずつ食事摂取が改善されたことは、栄養指導が身体的な回復だけでなく、心理的なサポートにも大きな役割を果たすことを証明しています。この経験から、栄養治療を行う上で、患者様一人ひとりの心理的背景を理解し、必要なサポートを提供することが、治療の効果を引き出すために不可欠であることを学びました。
今回の学会を通じて、栄養治療が単なる 「栄養補給」 にとどまらず、患者様の心身に大きな影響をあたえることを改めて実感しました。栄養治療は身体的な回復だけでなく、患者様が治療に積極的に参加する意欲を引き出し、前向きな気持ちを持たせるための重要な要素であると確信しています。今後は、栄養治療を通じて患者様の心身両面を支える看護を実践していきたいと考えています。また、多職種との連携を深め、患者様一人ひとりに寄り添ったケアを提供することで、より効果的な治療を実現できるよう努めていきたいです。