この度、パシフィコ横浜で行われた第41回日本栄養治療学会に参加し、口演発表をさせていただきました。患者さんの経過をふり返り、ひとつひとつ丁寧に考察する中で、様々なことを学びました。随時フィードバックした体組成変化データが、患者さんに具体的な努力目標として意識され、摂食やリハビリテーション訓練の励みに繋がっていったことは大変興味深い経験でした。
看護協会セッションからの学び
学会では、高齢者医療における栄養管理と安全管理の両立について多くの示唆を得ました。日本看護協会主催の「身体拘束行為の撲滅と患者安全の両立を目指して」というセッションで、医療安全システムの質向上には「安全」「効果的」「患者中心」「効率」「適時性」「平等性」という視点が不可欠であることを学んで参りました。しかしながら、医療現場では、人員や資源の不足という制約の中で、これらへの対応が求められていることも事実です。誤抜去ゼロを目標とする安全対策は重要ですが、その目標が過度に強調されることで身体拘束の選択に繋がる可能性があるという指摘がなされていました。実際、病床稼働率の上昇とともにインシデント報告数や自己抜去件数が増加しているデータも示され、拘束を行っていても自己抜去は完全には防げない現実が共有されました。
身体拘束は、転倒や自己抜去予防という「見えやすいリスク」に対する対策として実施されることがあります。しかし、その選択にはADL低下、せん妄悪化、恐怖や罪悪感の増強、回復遅延といった代償、トレードオフが存在します。1つの安全を守るための選択が、別の不利益を生む可能性がある事を理解する必要があると感じました。また、身体拘束が長期化する背景には、部署ごとの運用のばらつきや判断基準の曖昧さ、外的ブレーキの欠如など、組織的課題もあることが示されました。形式的なマニュアル整備だけでは病棟スタッフの意識変容には至らず、実例をもとに多職種の目線から継続的な評価と見直しが不可欠であること学びました。睡眠マネジメントやせん妄対策、老年症候群への包括的なアプローチが結果として身体拘束の最小化に繋がる可能性があります。リスクがあるからすぐに拘束ではなく、きちんとリスク評価し、予防的介入を重ねる姿勢が重要であるということも学びでした。
身体拘束を「ゼロにする」という目標は理想である一方、達成困難な数値目標のみが強調されると、現場にフラストレーションや萎縮を生む可能性もあります。根性論ではなく、技術と倫理的視点、そして患者さんの尊厳を中心に据えたケアの積み重ねが必要であることを強く感じました。
本セッションで得た学びは、私の発表テーマである脱フレイル支援とも関連しています。活動性を維持し、自立を支える栄養管理は、身体拘束に依存しないケアの実践とも方向性を同じくするものです。今後は、患者さんの安全と尊厳を両立させる視点を持ちながら、高齢者の生活機能を支える栄養管理に取り組んでいきたいと考えています。
