院長あいさつ/川津学
第2次世界大戦後の東西の冷戦時代に、超大国である米国とソ連のどちらにつくか、ということがその周辺の国々が頭を悩ます問題でした。どちらについた方がいろいろな軍事援助や経済援助を有利に引き出せるか、を地政学的な問題を超えて各国首脳は知恵をしぼっていました。もっと援助してくれなければ、反対側につくぞ、という言葉や態度による有形無形の主張は、両大国をたじたじとさせるに充分だったはずです。
このような有形無形の主張は当時、弱者の脅迫といわれたものでしたが、よくよく考えてみると、このことは私たちの仕事にも通じるものであるように思えます。

いくつかの慢性病の薬を服用しながら医療人として仕事している私は、身近に様々の情報や知識を手にし得る立場にあるので、自分を弱者と思うことは余りありませんが、患者さんの側はこれといった情報も知識もないのですから、病気や障害をかかえながら、不安で切実な気持ちで病院の門をくぐることでしょう。そこにいるのはいわば弱者としての患者さんです。そんな患者さんは病院に対して、いつもよりよい治療、よりよいリハ、よりよい接遇を求めているはずです。その都度十分なことをしてもらえなければ、いつでも他の病院に行こう、と思っているでしょう。それは何の不思議もないことです。私たちはその患者さんの心に職員皆が力を合わせて一生懸命応えることで、地域社会の中でかけがえのない病院であると認知されたいと思っています。これなら他の病院よりやっぱり有馬病院だ、と患者さんから認めて頂ければどんなにすばらしいことか、と願っています。